「水路はこうして地区の人たちが共同で管理しているという。急流鎮川の水は土砂や時には大きな石も運んでくる。水路を使い続けるために定期的な手入れは欠かさない。
『流すよー。』
誰かのかけ声のあと水門が開く。まるで体の中を流れる血液のように山から川、水路を通じて村へと水が巡りだす。
そして、最初にシャッターを私は切った。」
『私蔵版 鎖、川』 高橋侑哉 ハンザキ書房
表紙の小窓から覗くのは山煙。
手製本で出来たざらざらとした質感の35mmフレームをめくると、長野県朝日村の風景が目の前に現れます。こちらの本は、村のスタジオに滞在しながら自然や人々をシャッターに収めた写真家・高橋侑哉さん(@yuya_of_iyama )の作品集です。
彼は、というと、そう! 放蕩書店の店主を撮影いただいた、あの高橋名人です。
動的なものが一枚の写真の中で絶えず繰り返されているリピート。そんな《揺らぎ》の瞬間を捉える眼があるかたなのだと、モデルとして撮影していただきながら感じました。
『鎖、川』はドキュメンタリーな撮影を本分とする彼の技巧が発揮された一冊。
また製本方法も特殊で、また手製本のため同じものは二つとありません。
そのため限定50部なんだとか。作っていくうちに仕様が鎖のように連なりながら、リズミカルにマイナーチェンジしていくそうです。